妹さん家族がお住まいだった築29年3LDKのマンションを譲り受けることになったIさん。
これまで設備等、いっさいリフォームしたことがないので、この際全面的にリフォームし、快適な空間にしたいということで、スケルトンリフォームになりました。
シングルマザーで、末娘さんとトイプードルと暮らすIさんは、台所にいることが多いので、台所中心の家がご希望でした。無垢の床とスイス漆喰、造作キッチンや洗面台のタイルにもこだわりました。
さてさて、手仕事大好きなIさんが、わんちゃんと一緒にのんびり過ごせる、光が入って、風が通り、あまりピカピカじゃない、ちょっと昭和の匂いがするような、暖かい温もりのある・・・、そんな家が実現できたでしょうか。
部屋数を減らし、玄関ホールをゆったりと取りました。水廻りの位置は極力動かさず、トイレの向きを変え、玄関から中が見えないようにしました。和室はなくし、LDKを一体としました。廊下と寝室の2方向から使えるウォークインクローゼットは、扉を設けずオープンにしています。
初めてマンションを訪ねた時、玄関が狭くて暗い印象でした。正面にはトイレのドア、開けると中が丸見えでした。
明るく広がりのあるエントランスに変身。トイレは向きを変え、廊下の先にはニッチを設けて、視線を遠くに向け、奥行き感を出しています。
家に居るときの大半は台所で過ごす、というIさん。台所はこの家の中心で、とても重要なスペースです。キッチンは壁に付け、オープンにしました。
シンクの後ろの収納を兼ねた作業台は、移動もでき、簡単に食事もできるカウンターテーブルとしても使えます。料理をしながら、ビールを飲んだり、ちょっと食事もできるような楽しいキッチンです。
すべて新しいものばかりではなんだか気恥ずかしくて落ち着かないのでは、というIさん。
洋室には、取り壊し予定の当時お住まいだった家のドアを再利用することにしました。多少痛みもありましたが、白い空間にレトロなドアがしっくりと馴染み、ほっとする空間ができあがりました。また、他の部屋はトイレと浴室以外は扉を設けずカーテンでまかなうことにしました。
照明は少なく、明るすぎないほうがいいというIさん。
LD奥の壁には建築化照明を設けました。
光を天井に反射させることで、やわらかな光で眩しさを感じにくく、空間に心地よい明るさ感・広がり感を与えています。照明器具の存在感がなく、空間がスッキリとします。
ただ、これだけでは照度が不足で、今後加齢による視力の低下も考慮に入れて、引っ掛けシーリングを付けています。スタンドなどで手元の照度を確保するのも良いでしょう。
ダイニングテーブルの上にはペンダントを下げる予定です。
床は、ぬくもりのあるニュージーパイン浮造りの無垢フローリング。思わず靴下を脱いで素足になりたくなります。LDK・玄関・廊下の壁は、スイス漆喰の横引きでコテ目をランダムにつけた、金ゴテランダム仕上げをメインにしています。スイス漆喰は、強アルカリ性でカビの発生を抑え、調湿・消臭効果も期待できます。
他の壁と天井は、ドイツ製オガファーザーを使いました。
オガファーザーは、木屑と再生紙でできた、エコでからだにも優しい壁紙です。塗装用下地なので、将来は上から何度でも塗り替えができ、自分でもメンテナンスが可能です。
お引渡しからちょうど半年たって、I様邸に伺いました。
手縫いのカーテンやクッション、棚に置かれた道具類などから、Iさんの飾らない自然派な暮らしぶりがうかがえ、とてもほっとするお住いになっていました。
一緒にお住まいの末娘さんから、「こんな快適な家に住まわせてくれてありがとう」と言われたとのこと。嬉しいです。
「実現するか分からないのにいつか古いマンションが手に入ったら自分の好きなようにリフォームして住みたい、と漠然と思っていました。
ある日突然その日がやって来てすぐ頭に浮かんだのは、20年来のママ友、田口さんご夫婦の顔。
打ち合わせが始まっても決断力のない私に良く付き合ってくださりました。悩んでばかりで話が進まず迷惑かけ通しでした。
工事が進んでからも現場の人に、「やっぱり」と無理な変更をお願いしたりで、本当に感謝しています。
キッチンが中心の家の希望通り、一番のお気に入りはキッチンです。タイルの作業台の白いホーローのシンクは思った通りの出来上がりです。
壁のタイルと飾り棚はどこから見ても大好きな眺めです。
洗面所もタイルをこだわって探したかいあり、大成功でした。
木の床と漆喰の壁。
譲らず施工していただき本当に良かった。リラックスできる空気が漂っています。
まだ春と夏しか過ごしていませんが、これから来る秋と冬が楽しみです。最初は床にすぐ傷がつき気にしていたけど、今では傷なんて全く気にならず、年月が経つのが楽しみです。
そして今、お気に入りの台所で野菜を茹でたり、洗い物をしたり、ビールを飲みながらつまみをつくったり、何だかひとりでニヤニヤ笑っている私がいます。」
最後にIさんからこんなメッセージをいただきました。
「家って賑やかな時と静寂と、人の気配があり、生き生きとしていくんだなと思いました。改めて素敵なおうちをありがとうございました。」
これからもゆっくりと、Iさんらしい暮らしを紡いでいっていただけたらと思います。