「おじいちゃんの家に住んでもいいよ」という娘さんの言葉があったから、このリノベーションは実現したのかもしれません。
Mさんご家族は新潟県妙高市にお住まいでした。
松戸でひとり暮らしだったお父様が急逝され、残った家と店舗(酒、タバコ販売)をリフォームできるだろうかとのご相談を受けました。
1階部分は築45年、H鋼を組んで増築された2階が築35年、そのお父様ご自慢のH鋼の構造を残し、できるだけ耐震性と断熱性能を高めたリノベーションとしました。
数十年前は「中和倉銀座」と呼ばれていた商店街の中にM商店はあります。
以前は全面がシャッターで覆われ閉鎖されたイメージでしたが、シャッターを取り除き、通りに対してオープンにしました。店舗ファサードはモスグリーンの板張りがもともとの外観に違和感なくマッチしながらも、白いサッシと補強のための白いブレースが明るく軽やかな印象を与えています。
真っ暗だった、元倉庫部分は赤松の目透し貼りと古い鉄骨を白く塗り、見違えるように明るい、車庫・多目的スペースとなりました。真っ白な天井で見えなくなりましたが、お父様のご自慢だったH鋼はしっかりと残されています。
店舗の横のRの塗り壁に沿って、住居の玄関へとアプローチします。
そこだけは天井を下げてウォールウォッシャーのダウンライトを配し、倉庫部分と一線を画しています。
床は無垢のパイン材で、土足で上がるのがもったいない感じですが、無垢ならではの経年変化を楽しんでいただきたいと思います。天井と壁は既存部分との不陸調整のためと、デザインも兼ねて、木の押縁で仕上げました。白で統一され、清涼感のある店内となっています。
「できるだけ明るくしたい」というご希望でしたので、以前あった広縁を撤去し、リビングスペースを広げ、採光をたくさんとり入れました。キッチンは対面式に変更し、収納も確保しました。既存の建具や木製の格子も白く塗装し、白で統一された空間にオレンジの壁が温かさを醸し出しています。
キッチン背面収納は大工さんの造作工事です。右側は家電収納で、棚がスライドするようになっています。
玄関のポストの上にはディスプレイ用の棚を設け、照明器具で照らして演出を施しています。
ポストからの郵便物は玄関内部の棚にそのまま落ちるようになっており、下部は傘収納スペースになっています。
妙高から松戸に引っ越していらっしゃったMさんご家族。
ずっと現場に来ていなかった奥様とお嬢さんのKちゃんはテンションあがりっぱなし。
「Kね~、こんなおうちにすみたかったの~」と、Kちゃんはスキップしながら言ってくれました。
お客様の喜ぶ顔が、私たちにとって何よりのご褒美です。
1年半ぶりに伺ったM商店は、店舗部分を縮小し、奥をMさんの打合せ兼フリースペースにしていました。
Mさんは、自宅玄関へのアプローチのR壁部分や、店舗の天井などがとても気に入ってくださっているとのことで、「アルセッションさんに頼んで、本当に良かったです」と、しみじみ言ってくださいました。
こちらも嬉しくなってしまいました。