ハウスメーカーのコーディネーターをしていて、家の色打ち合わせをするのですが、外観の打ち合わせで、お客様からよく出てくるセリフが、「外壁がお隣とかぶっちゃうんですよね」というもの。たとえば、ブラックの外壁にしたいが、お隣もブラックだというのです。けっこう皆さん自分の家の周りに建っている家の外観を気にされています。それは、まわりと似たような家になると個性がなくなるということと、かぶったらその家に悪いのではという気遣い、また、真似をしたと思われるのが嫌という気持ちなどからの様です。
そうやってそれぞれがお隣とかぶらずに、個性を出そうとするわけですから、およそ調和のとれた街並みにはほど遠い、ふぞろいな景色ができあがります。それぞれが違う方向を向いています。
しかし、中にはまれに、「目立たない、普通の家にしてください」という人もいらっしゃいます。「普通」はつまらない、ダサいと受け止められてしまう傾向の中で、かえって新鮮に感じます。
土地を切り開いて作った新興住宅地にハウスメーカーの様々なタイプの家が立ち並んでいます。それはそれで、現代の日本の風景なのでしょうが、はたして美しい景色しょうか。
昔の日本の建物は、その土地の風土に合わせた形態や素材で家が建てられていたので、その土地らしい景色が見られました。
高度経済成長と共に工業製品が発達し、また近年住宅性能が向上してきて性能重視で家が建てられるようになってきました。性能は良い方がいいに決まっていますが、味気ない町並みが増えているように感じます。
一方、ひとつのハウスメーカーが企画した分譲地には、工業製品を使っていても、統一感のあるデザインや色合いで、また、外構や植栽などで調和のとれた街並みになっているところもあります。しかし、それもほんの1角のことですが。
個性を競い合う建物の集合には、調和はありません。
海外に目を向けても、美しいと感じるのは街全体が統一されたデザインや色使いになっています。
どんな風景を残したいか。
それを個々が考えながら街づくり、家づくりをしていけば、もっと美しい街並みになっていくだろうと思います。
by Nakane