最近の新築住宅では、あちこちに「F☆☆☆☆」のマークが目に付くようになりました。「F☆☆☆☆」を使っているから安心ですよと言っているようで、規制対象外の商品にもわざわざ使用しているメーカーもあります。
「健康で快適に暮らせる家に住みたい」という消費者の心理を利用した宣伝文句を掲げている会社が多くなりました。
「健康住宅」「自然素材」「シックハウス対策住宅」「F☆☆☆☆建材使用」・・・
しかし、いったいなにを基準に「健康住宅」と言っているのか、一部に自然素材を使っていれば自然志向と言えるのか、
F☆☆☆☆建材を使っていれば安心なのか・・・。
「健康住宅」や「自然素材」とは、そんなに安直なものなのでしょうか。
平成15年7月1日より、シックハウス対策の実施が義務付けられました。内容は、一部の化学物質が発散する建材の使用量を制限することと、24時間換気システムの設置です。
規制対象となったのは、ホルムアルデヒドとクロルピリホスの2物質だけで、クロルピリホスは全面使用禁止、ホルムアルデヒドは発散量に応じて使用量を制限されました。しかし、発散量の少ない「F☆☆☆☆」は使用量に制限がありません。そして、ホルムアルデヒド以外の化学物質に関しては今のところ無制限です。
法律で義務付けられたのは「ホルムアルデヒド対策」であって「シックハウス対策」ではないのです。
今のところ「F☆☆☆☆」を使っていれば法律上は問題ありませんが、法律を守ればそこに住まう人の健康を守り、病気にならない家が造れるかといえば、そうではないのです。
また、最近、特に若い世代でナチュラル志向の人たちが増え、「自然素材」「ナチュラルライフ」「エコ」などの言葉に敏感になってきました。 私はここ2、3年ハウスメーカーのコーディネーターをしていますが、若いご夫婦の、特に奥様が自然素材を希望されることが多いです。
確かに人間も自然の一部とも言われ、自然から生まれた素材が身近にあるのは安心感があります。
「ぬくもりのある無垢材仕様」ということばにひかれてやってくるお客様。
しかし、その無垢材は薬剤で防腐処理を施し、化学塗料で色付けした「無垢材もどき」である場合があるのです。
自然素材をうたい文句にしながら、本来の無垢材の特性をよく理解せず、説明不足のためクレームが発生するパターンが多いので、クレームを避けるためにこの「無垢材もどき」を使うことになるのです。
なんとなくよさそう、という感覚のお客様と営業、両者の理解不足です。
せっかく無垢材を選びながら、色を選ぶ際「手垢がつきやすいですよ」「子どもの工作みたいで安っぽいんですよね」などという、心ない営業マンのひとことで、自然塗料でなくウレタン塗装の光沢のあるほうを選ばれるお客様がいらっしゃいます。
「せっかく無垢をお選びですから、自然塗料にしませんか。本物だったら、汚れも傷も味になります。」と申し上げると、たいていは自然塗料になりますが、お客様によっては光沢のほうを選ばれる方もいらっしゃり、「無垢」ということばにひかれているだけなのだとわかります。
単純に「自然素材」を使えばいい家になるというものではなく、素材の性質を無視した無神経でアンバランスな使い方、技術の未熟さなどから、いただけないデザインのものが目に付きます。
自然素材の利用だけを売り物にするような「自然素材住宅」は決して美しくありません。
もっと素材そのものの性質を読み取り、心を傾け、技を磨き、そのものにしかない形、そのものにしかできないデザインに熟成させていくべきだと思うのです。
ことばに踊らされず、なにが本当かを見極める目を持たなければなりません。その上で健康で快適に暮らすにはどうしたらよいのかを考えていくことだと思います。
by Nakane